勇者の笑みにくすぐられ























食事を終えたわたしたちは、森の中をずんずん進んでいった。人の入り込んでいないだろう道を。ポチはユーリの頭の上にいる。親竜はこどものにおいをたどっておそらくちゃんと着いてきているとのこと。一度村に戻ってアルフォードを引き渡す予定らしいけど、うーん、そんなに心配しなくてもいいと思うけどなぁ。って思ってたら、コンラートも同意見だった。


「ふんっ、相変わらず人間贔屓だな!」


半分人間の次兄にヴォルフラムが鼻を鳴らすけど、コンラートの返しはちょっと意外だった。


「そうでもないさ」


コンラートは王都近くの人間難民の村で子どもたちに人気ってユーリからきいてたから、人間も魔族も思える人なのかなって思ってたけど、ちょっと違うのかもしれない。まだまだわからないことだらけだなぁ。
それからコンラートの提案で、少し休憩をとることになった。



















アルフォードの聖剣はコンラートが預かってて、そのコンラートは大きめの岩に腰掛けて目を閉じている。その様だけで絵になって、思わず感嘆の声が漏れる。


「イケメンだよねぇ・・・」

「イケメンだよなー・・・」


相槌を打ってくれたのは我が半身で、ヴォルフラムやアルフォードは「イケ・・・めん?」って首を傾げてる。


「イケてるメンズ・・・かっこいい男性ってことだよ」

「・・・はコンラートのような男が好みなのか?」

「へっ?」


ユーリの説明にヴォルフラムが呟く。ちょ、なんてこときくの!変な声出ちゃったじゃん!


「こっ、好みっていうか!一般人の見解だよ!爽やか美形には弱いもんだよ!」

「何を言うのです!姫や陛下のほうが何百倍も何千倍もお美しいです!!」


ギュンターさん、今の問題そこじゃないから!!


「・・・そうだな、確かに美しさならお前のほうが・・・」

「・・・アル?」

「なっ、なんでもない!」


え、え、なに、なに?アルフォードそんなにわたしにデレて大丈夫!?ファンに怒られたりしない!?
なんだか混乱気味のわたしの心情なんてお構い無しに、パーティは再び歩を進めだした。



















村に着くと、そこは大惨事だった。原因はわからないけど、ポチのお母さんが怒って暴れているみたい。お母さんを止める前にひとまず村人さんたちを避難させようってことで、ポチを茂みに隠して走り出した。



















村人たちを誘導していたらアルフォードがお母さん竜と対峙しているのが見えて駆け寄った。


「アルフォード!」

!危険だ、下がっていろ!」


そう言われて大人しく下がれますかっての!


「アルフォード、お母さんはただ子どもを守りたいだけなんだよ!」

「!」


怯えて丸くなっている仔竜を示すと、アルフォードの構えが緩まった。わかってくれたかな・・・?
アルフォードは「そうか、これが・・・」と呟くと、剣を地面に放った。そして、まっすぐ竜を見据える。


「落ち着け、今は戦う時ではない。それに、俺はお前と戦うつもりはない。お前の子どもはそこだ」


冷静さを失っていたお母さんに子どもを示して見せる。お母さんはやっと怒りを鎮めて、めでたく我が子と再会した。



















いつの間にかユーリたちのほうで法術使いたちは片付けられていた。何があったの?ってきくと、魔王モードで倒した、とのことで。ユーリの勇姿が見られなくてちょっと残念。
竜の親子は新しいおうちを見つけてそこに住むことになった。なかなかに気に入ったようで、よかった。
そしてびっくりなのが、コンラートとアルフォードのお父さんが昔勝負したことがあるってこと。コンラートの圧勝だったみたいで、さすが年季が違うって妙なことを思ってしまった。アルフォードのお父さんは一度もコンラートに勝てなかったらしくて、今度はアルフォードが、お父さんに代わりにコンラートに勝つって言った。なんか、魔族と人間の時の流れって違うけど、こういうのはいいなって思った。そしてさらに。アルフォードは魔剣を持つユーリとの勝負もしたいって。モルギフ、勝てるかなぁ。




「うん?」


別れ際、アルフォードに声をかけられて首を傾げる。


「あの時は、俺に冷静さを取り戻させてくれてありがとう。助かった」

「いやぁ、わたし何もしてないよ?」

「それが俺を助けたのは事実だ」


うーん、まぁ、アルフォードがそう言うならそうなのかな。


「もっと強くなって、ウェラー卿に勝ったら・・・」

「・・・勝った、ら?」

「・・・いや、その時のお楽しみにしておくか」


ふっと笑うアルフォードにまた首を傾げてしまう。なに、気になっちゃうよ!隣ではユーリがにやにやしてるし!
夕焼けに向かって歩いて行くアルフォードの背中はなんだかかっこよくて、いい出会いをしたなって嬉しくなった。




















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