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紅白戦開始





















秘密の特訓が終わってから、風祭が西園寺らの部屋に来た。というより、西園寺が、もう少し練習しようとした風祭を連れて来た。度の過ぎる練習は明日に響くからホットミルク

を飲んで休みなさい、と。すっきりした顔で出て行った風祭を見て、彼らなら大丈夫だろうと、は自分がやるのではないのに気が高ぶっていたのだった。



















いよいよ合宿最終日。朝早く起きたは、知った背を見つけて声を上げた。


「不破!」

「・・・?」


が小走りに駆け寄ると不破が首を傾げる。


「おはよう!」

「あぁ、おはよう」

「昨日はよく眠れた?」

「そうだな」


の問いに、不破は淡々と答えていく。


「今日は勝てそう?」

「勝つ!」


だがこの問いには、気合を入れてぐっと拳を作ってみせた。の顔に笑みが浮かぶ。


「応援してるからね!」

「あぁ」


ぐっと拳を不破に向けて突き出すと不破は一時停止したが、やがてふっと小さく笑みを見せると、コツンとの拳に自らの拳を打ち当てた。


「えへへへへー」

「何気持ちの悪い声出してんだよ」

「った!!」


嬉しさと気恥ずかしさが混じって出た声のあとに、背後からのどつきに声を上げる。勢いよく振り向けば、そこには椎名や風祭といったB組みのメンバーがいた。


「もー、つっちゃん!!」

「俺たちの応援は?」

「もちろん、つっちゃんたちも応援してるよ!」

「俺たちも、ねぇ」


ちらと椎名が不破を見るが、本人はただふたりの様子を見ているだけである。椎名はやれやれいつになったら進展するのやらといとことその“友人”を見た。しかし今はそれどこ

ろではない。気持ちを切り替え、一同はフィールドへと踏み出すのだった。




















始まるのは、AとBの紅白戦。選出方法は知らされていない。は今日もボードを手にしているが、それは自分のためのものだった。自分自身が彼らのいいところ、勿体無いと

ころを記しておきたい。そう思っての行動だった。開始のホイッスルが響くとAとBの間ではやくもボールの奪い合いが始まり、Bがゴール手前までボールを運んでそれを渋沢が

キャッチした。わあああっとのテンションが上がる。その後も両チーム一歩もひかず攻防を繰り返す。そしてBのゴール前で風祭と水野が対峙し、水野がラボーナでクリアし

た。そのアシストはゴールへと導き、Aに点を入れる。そして尾花沢の声が上がった。


「水野!上がってよし!交代(・・)だ!」


場の空気が一瞬固まった。活躍したはずの水野が交代、という事実に良くも悪くも選手たちの顔つきが変わる。ミズノがビプスを次の選手に投げつけるように渡し、納得できない

様子で尾花沢を睨みつけて下がった。


(水野くんが交代・・・?確かに無茶なコースだとは思うけど、あの技術はいい欺きになったし、交代の理由には・・・・・ん?)


ははっとして尾花沢の隣に立つ西園寺を見た。の視線に気づいた西園寺が、にこりと笑ってみせる。それで確信したは口を引きつらせて「あはは・・・」と声をもら

した。


「これ・・・とんだ修羅場にならないといいけど・・・」


はやくも違う意味で選手たちが心配になるであった。



















その後も攻防戦は続き、良いところを見せようと各々が動く、走る。ゴール付近で藤代と椎名がやりあい、藤代がバイシクルシュートで点を取った。そして呼ばれる藤代と椎名。

藤代は“落とされた”ことが納得できずに尾花沢に食ってかかった。


「ふ、藤代くん・・・」


さすがにそれは、と心配になりながら見守っていると、西園寺が「いいえ!間違えてないわ」と声を上げた。


「このゲームでは最終選抜メンバーに確定した者から抜き出してるんですから」

「ってことは・・・つまり・・・」

「水野、藤代、椎名は合格」


フィールドが一気にざわつき、緊張がはしるのがにも感じて取れた。


「これは20人の枠を争うサバイバルゲーム・・・残り17人、このプレッシャーの中で生き残れるのは誰かしら?」


ゲームが再開し、気迫の量が増した。



















点は確かにAの方がとっている。が、ボールを支配している時間はBの方が多いような気がする。Aに回って郭が真田にボールを出すが、凡ミスを何度かしてしまっていた。


「真田くんは、プレッシャーに弱いのかな・・・?」

「だろうね」

「つっちゃん」


ぼそりと呟いた言葉は、合格した三人に聞こえていた。のそばに来て、椎名がのボードを覗き込む。


「さすが、よく書き込んでるじゃん」

「いやぁ、やっぱこういうの楽しいんだよね」

「だから言ったじゃん、飛葉に転校してマネージャーやれよって」

「それとこれとは話が別!ほら、フィールドに集中!」


椎名の顔を無理やりフィールドに戻させる。水野も藤代も背が高いのでちらりとのボードを覗き込み、密かに感心していた。
途中、真田が衝突により30秒ほど意識を失っていたらしい。心配になるところだったが、郭、若菜に叱咤激励され、真田は調子を取り戻した。そして彼らの活躍で前半は終了し

た。その点差、3点。前半終了のタイミングで7人の合格が決定し、残りの枠は10人となった。BのGKだった小堤も合格したため、後半からはそこに不破が入る。


(不破、ファイト!!)


心の中でがエールを送る。と、不破がいいタイミングで振り向いて、ぐっと親指を立ててみせた。ぱあっとの顔に笑顔が浮かび、ぐっと親指を立て返す。後半開始となる

と、すすすっと藤代が寄ってきた。


「ねぇちゃん、不破と付き合ってんの?」

「え!?は!?違うよ!?」

「そんな全力で否定しなくても」


とんでもないことを言われて大声で言うと、さすがの藤代もびっくりして身を引いていた。それから藤代は椎名に何やら耳打ちし、渋沢の方へと歩いて行った。


「・・・何言われたの?」

「別に?おまえら残念だなってことだよ」

「なにそれ意味わかんない」

「・・・本気で言ってんの?」


半分、というと、椎名は若干驚いた顔をした。


(一応前進はしてんのか)


やれやれいつになるやらと今朝も思ったような気がすることを胸中で呟き、ゲームに集中することにした。




















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