嵐が巻き起こる


























本日は晴天。絶好のサッカー日和。だが、雷門中学校のグラウンドにサッカー部はいない。サッカー部は7人しかおらず、部長とマネージャー以外はやる気のない部だ。昔は名門だったサッカー部も、現在では落ちこぼれ。そんなサッカー部の部室を横目で見て、は帰路へついた。

























翌日、転校生がきた。豪炎寺修也。サッカーの名門、木戸川清秋からきたらしい。なぜかその豪炎寺に、サッカー部部長での幼馴染の円堂守が食いついている。状況が把握できず、はサッカー部マネージャーの木野秋にきいた。


「ねぇ秋、“あれ”なに?」

「昨日ね、河川敷でちょっとトラブルがあって・・・。それを助けてくれたのが豪炎寺くんなの。すごいキック力で、円堂くん惚れ込んじゃったみたいで」

「・・・本人、サッカーはもうしないって言ってるけど?」


円堂と豪炎寺を見てみれば、確かに豪炎寺は、サッカーをやめたと言った。


「昨日はほんとに、すごかったんだけど・・・」

「わけあり、かな」

「かなぁ」


そんなことをよそに、サッカー部に大きな問題が降りかかった。
























「廃部!?」

「廃部になんてさせねぇって!!」


どうやら、サッカー部は練習試合をするらしい。相手は、名門、強豪の、最強の、帝国学園。サッカー部は人数がまず足りない。人数を集めて試合をし、勝てなければ廃部、なのだそうだ。


、頼む!!」

「あたしじゃ役に立てないよ、円堂。あんたもわかってるでしょ?」

「ぐぬぬぬぬぬ・・・!!」

「それにあたし、女子だし」

「・・・そうだった・・・」


ガクッと看板を掛けた肩を落とす。そうだった、て、いままでなんだと思っていたんだ。


「学校中駆け回ったら、もしかしたら見つかるかもよ」

「今それをやってんだよ!でもなかなかなぁ・・・」

「ほかのみんなは?」

「うーん・・・」


円堂が苦笑する。どうやら協力的ではないようだ。


「練習には、付き合うから」

「あぁ、頼む!」


二カッと笑うと、円堂はまた駆けて行った。放課後は鉄塔広場かな、と思いつつ、も歩を進めた。
























鉄塔広場に行くと、円堂と、豪炎寺がいた。なにか話している。円堂が一方的に勧誘しているようだが、それでも豪炎寺は拒んでいる。


「だったら、なんで昨日ボールを蹴った!?」


円堂の言葉に豪炎寺の動きが一瞬止まる。昨日の状況はわからないが、確かに、サッカーをやめたのなら、なぜ。それに答える事はなく、豪炎寺は去って行った。


「ねぇ円堂、まだ豪炎寺勧誘するの?」

、来てたのか」

「あれ、テコじゃ動かないよ」

「あきらめるもんか!あんなストライカー、めったにいない!!」


円堂は本気のようだ。やれやれ、と呆れの苦笑をし、はロープを手にした。


「それじゃ、円堂の特訓、はじめよっか」

「おう!」























タイヤ対円堂。ぶつかり合ってぶつかり合って、ぼろぼろになる。いつも、無茶苦茶だなぁ、大丈夫かなぁと思いはするが、止めはしない。陽が暮れてきたころ、第三者の足音がきこえてきた。


「無茶苦茶な特訓だな」

「風丸!?」

「もっと言ってやってよ、イチ」


風丸一郎太。陸上部所属の、円堂との幼馴染。風丸にも声をかけたと円堂は言っていたが。風丸の手を借りて円堂が立ち上がる。


「なんでこんな特訓を?」

「あれだよ」

「?」


円堂が指差したのは、一冊のノート。それを開いて、風丸は固まった。


「きったないでしょ。円堂のおじいさんのだって」

「円堂は、これ読めるのか」

「うん、読めるよ」


円堂のおじいさんは、元雷門中の監督。キーパー技の特訓方法が書かれているらしいそれは、にはさっぱり読めなかった。


「帝国に勝つには、じいちゃんの特訓が必要なんだ!」

「・・・お前、本気で帝国に勝つ気なんだな」

「あぁ!」


ふう、と一息ついて、風丸が右手を出した。


「お前のその気合、乗った!」


パァっと円堂の顔が晴れる。


「ありがとう!風丸!」

「よかったね、円堂」

「あぁ!」

「ありがとね、イチ」

「おまえが言うのも変だな、

「まぁそうなんだけどね」


へへ、と笑うのは、なぜだか自分も嬉しいからである。そして風丸は、後ろに声をかけた。後ろから出てきたのは、サッカー部のメンツ。どうやら風丸が来るより先に来ていたらしい。


「なんだ、やっぱりみんなサッカーが好きなんじゃない」

「当たり前だろ」

「よし!じゃあ特訓再開だ!!」

「「「おー!!!」」」

「え、まさかみんなであの特訓やるの?」


の呟きは、夕陽の彼方に消えた。





















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