がこの世界に来て、約一年の時が流れた。現在ルキは飛行竜の中にいる。今回の任務はリオンと一緒ではなく、一人の任務だ。それが決まったのは、つい昨日のこと。
「え?今度の任務は私一人なの?」
突然言われ、は少々戸惑った。今まではどの任務もリオンと一緒だったからである。
「これくらい一人でこなせるだろう」
気にした様子はなく、リオンはただに任務書を手渡す。
「“飛行竜で護送される重要物の護衛”か。まぁできそうではあるけど、飛行竜ってまだ乗ったことないんだよね」
『あぁ、それで坊ちゃん、今回の任務をに任せたんですね』
「え?」
シャルティエが納得したように言うが、わけがわからないは首を傾げるしかない。
「黙れ、シャル。余計なことを言う必要は無い」
『でも坊ちゃん、は坊ちゃんのパートナーとして知る権利がありますよ!』
いつの間に部下からパートナーに格上げされたのだろうと思いつつ、はリオンに目を向けた。
「権利なら僕にだってあるはずだ。拒否のな」
『じゃあ僕にも言う権利がありますよね。坊ちゃんは「沈めるぞ」ごめんなさい』
シャルティエはリオンの脅しに呆気なく負けた。剣の身では抵抗すらできない。
「まぁいいよ。とにかく、リオンはいかないんでしょ?」
「あぁ」
「なら、交換条件ってことで帰ったらシャルにきくかな」
「!!」
しまった、とリオンが思った時にはすでに遅し。は上機嫌で荷支度を始めていたのだった。
そして、今に至る。飛行竜は竜を模した飛行機のようなものらしいが、普通に乗っているかぎりでは竜という感じはしない。当たり前ではあるが。飛行竜は現在セインガルドが管理しているこのルミナ・ドラニコスのみで、とても貴重なものらしい。そんななものに乗っているなんて、少し得した気分だ。ちなみにの現在地は重物庫。ほかのクルーは共におらず、一人で護衛物のそばに座っている。
「それにしても、まさか護衛物ってのがソーディアンだったとはねぇ・・・」
シャルティエと同じコアクリスタルがはめ込まれているが、シャルティエとはまた違った造りである。リオンのような小柄な人間が扱うような細身のものではなく、体格のいい人が扱うような大剣だ。眠りについたままなのか、一言も言葉を発していない。
「・・・・・暇」
薄暗い重物庫の中で大きく欠伸をする。緊張感にかけているが、こうも暇だと仕方のない気もする。何事も無いにこしたことはないのだが。ははやくダリルシェイドに着くことを願っていた。