良き間柄に




















カーテンの隙間から入り込んでくる陽の光が眩しくては目を開けた。身体を起こして伸びをしてみる。調子は大分良くなったようだ。カーテンを一気に開けて空を見た。太陽は既に上の方にまで昇っている。

「・・・昼だし」

長い時間熟睡していたんだなと感心する。ベッドに腰掛けてから、机の上に食事が置いてあることに気づいた。その横には、さりげなく本が置いてある。はパンを頬張りながら本を手にとった。

「“世界”・・・」

リオンが置いてくれたのかなと思いながらページをめくる。この世界のことがそれなりに詳しく書いてあるようだ。ページをめくったとき、タイミングよくか部屋のドアがノックされた。

「ルキ、起きた?」

「うん、起きたよ。どうぞ」

声と話し方からしてマリアンだろう。が入室の許可を伝えると、マリアンはポットを持って入ってきた。

「調子はどう?」

「だいぶ良くなった。今日休めば全快すると思う」

「そう、良かった。紅茶を持ってきたのだけど」

「ありがとう、もらうよ」

マリアンは食事と一緒にして伏せたあったカップに紅茶を注いだ。

「それじゃあゆっくり休んでね。ポット、ここに置いておくわね。何かあったら言ってちょうだい」

「うん、ありがとう」

マリアンは笑みを見せて部屋から出て行った。それを見送り、ページめくりを再開する。それからリオンが明日の任務内容を伝えに来るまでには、は本を読み終えていた。やはり異世界というものは地球とは違うことが多い。文明、生態、地理・・・覚えることは山以上にあるようであった。


















翌朝、六時起床。昨日動いていない分動こうと庭に出たが、既に先客がいた。

「早いね、リオン」

彼はを一瞥すると、構わず稽古を続けた。反応がそれだけではあったがリオンという人物が少しわかってきたは気にすることなく、リオンから少し離れたところで剣を抜いて自身も稽古を開始した。
まだ、やっていけるか少し不安なところもあるが、リオンと一緒なら大丈夫のような気がする。剣を振るって一息ついたの心に、その思いが浮かんでいた。

















稽古の仕上げはいつも居合だ。ルキは剣を納めて構えた。神経を研ぎ澄まして集中し始めると、彼女の前に立つ影があった。ふ、と視線を上げてリオンの姿を確認する。

「リオン?」

「その技、受けさせてくれ」

「・・・いいよ」

の返事を聞き、リオンがシャルティエを構える。も集中し直した。勝負は一瞬。が素早く抜刀し、リオンがシャルティエを振り下ろした。少しの間があり、シャルティエが地に転がる。勝ったのは、またしてものほうだった。大きく息を吐くと、リオンは黙ったままシャルティエを拾い上げた。

『坊ちゃん・・・』

「・・・いつか」

リオンがに背を向けて口を開いた。

「いつか必ず、その技を見切ってみせる」

言って振り向いたリオンの目は真剣そのものだった。ただ一人の剣士としての居合を打ち破りたい。その強い想いを秘めた瞳だった。はそんなリオンに小さく口元に笑みを浮かべて返す。

「楽しみにしてるよ」

それをきくとリオンは踵を返して屋敷の中へと入っていった。



















はひとりだった。特殊な家系故に普通の道場に通うわけにもいかず、また“一般人”と同じ場で稽古するわけにもいかず、そこにいるの母の弟である剣の師だけだった。ライバルというものがいなかったにとって、リオンという新しい存在は喜ばしいものだった。負けられないなと気を引き締めたとき、の腹の虫が鳴いた。緊張感のない腹である。

「・・・ごはん」

直後、タイミングよくマリアンが庭へ顔をのぞかせた。彼女に軽く手を振り、もリオンが入ったそこから中へと入っていった。





















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