鎌倉へ
鎌倉の地を怨霊から守るため、一行は東へと向かった。源氏の棟梁、源頼朝がこのまちにいる。京にも怨霊はいたが、鎌倉にも怨霊が増加していた。
「急いで封印して回らないといけないね」
「あぁ・・・人が犠牲になれば、それがまた怨霊となる」
敦盛が哀しみに顔を歪める様子に、望美も頷いた。ともかく町中を調べ、黒幕と怨霊の出所を突き止めるしかない。どこかに腰を落ち着けることになったのだが、それには朔が名乗り出た。うちに来ればいい、と。その提案に景時は何故だが動揺していた。彼はみなが家に来るのが嫌なのだろうか。
「この人数で泊まるのは、さすがに迷惑ではないか」
「熊野の時のように別に宿を探した方がいいかもしれませんね。景時さん、近くにこの人数で泊まれそうな宿を知りませんか?」
「あ、いやいやいや、いいんだ。ごめんね、遠慮しないで」
だが敦盛と譲に言われ、慌ててこぼす。
「みんなが来てくれるのは嬉しいんだよ。ただね〜、狭い我が家だからさ〜、ちょっと気が引けただけなんだ」
「何を言ってるんだ、立派な邸じゃないか」
「は・・・・はははは、そうかな?うん、そうだね・・・。・・・鎌倉だったらどこも変わらないか・・・」
「?」
九郎に言われ、景時は乾いた笑いを漏らす。結局のところ、景時が何故気が引けたのかわからなかった。最後に呟いた言葉は近くにいたにしか聞こえなかったようだが、その意味も、彼女にはよくわからなかった。ただ。
「立派な邸かぁ・・・」
「言っとくけど、比べるなよ」
「え、えぇ、わかってるわよ」
小さくこぼした言葉を、はヒノエに突っ込まれていた。
梶原邸へ向けて歩いていたさなか、突然白龍が走り出した。慌てて追っていくと、そこには熊野で別れた“彼”がいた。
「将臣くん!?」
望美に呼ばれ、彼が振り向く。
「ん?お、望美。偶然だな」
よ、と軽く手を上げる将臣に、望美は笑った。白龍は天の青龍の巽の卦を感じて走り出したようだ。また八葉が揃った。将臣は鎌倉まで、人を捜しに来たと言う。それは、鎌倉に怨霊を放つと言っている者らしい。将臣はその者を止めるために来たということだ。
(将臣が平家方なのは間違いない、か?あとは誰が怨霊を・・・)
「ねぇ将臣くん。誰が怨霊を放とうとしてるか知ってる?」
が内心で呟いた疑問を望美が口にした。ありがたいと思いながら二人の会話をきく。
「ん?あぁ、維盛・・・平維盛だ」
「維盛殿・・・」
出された名を、敦盛が繰り返しつぶやく。
「その様子だと、お前達も維盛の放つ怨霊退治ってところか?一緒に行こうぜ。久しぶりに八葉の再結成ってのも悪くないだろ」
「ありがたい。お前が来てくれれば心強いからな。同じ青龍の加護を受ける八葉―――地の青龍として、よろしく頼む」
将臣の申し出を九郎は喜んで受け入れた。他の皆も笑って彼を迎え入れた。
将臣を一行に加え、梶原邸への道をまた進む。
「・・・おまえはまたどうしたんだよ?」
「え?」
どうやらまた、将臣をじっと見てしまっていたらしい。無意識だったは目をぱちくりさせた。
「また俺の顔をガン見してただろ。やっぱり惚れ「違う」・・・そう断固拒否すんなよ」
拒否ではないが、無いことを言われるのは心外なのである。
「ききたいことでもあんのか?」
「無いと言えば嘘になるけど、将臣はきっと話さないわ」
「・・・へぇ?」
興味深そうに将臣は片眉を上げた。
「いいの。いずれはわかるだろうし、今もめるわけにはいかないから」
の意味深な言い方に将臣はまさかと思ったが、確かに内輪もめをする場合でもないので、きかないでおくことにした。
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