星のしるべ
魔術師二人
かの運命の執行者
―――――二人の魔術師―――――
魔術師の塔の地に足を着け、二人の魔術師が住んでいる魔術師の塔の前に立つ。この、天まで届きそうなくらい高い塔は、上層部以外はほとんどが飾りのようなものだ。はもう一度転移して一気に登った。
転移した先で、魔術師たちがを出迎えた。
「よく来てくれました、」
この塔の主、そして“運命の執行者”であるレックナートが言った。
「星が巡るからね」
はそう言い返して薄く笑ったが、レックナートは悲しげな表情になる。
「貴女にはまた、辛い思いをさせてしまいますね・・・」
その言葉には首を横に振り、笑った。
「それが、“天空”を宿したあたしの使命だから」
「・・・」
にこりと笑うと、レックナートも微笑んだ。そう、レックナートが気負うことではないのだ。
「あのさ、僕の事見えてないわけないよね?忘れないでくれる?」
そこへ、もう一人の魔術師であるルックが口を挟んだ。彼はレックナートの一番弟子で、真の風の紋章の継承者だ。ちなみにレックナートにはルック以外に弟子がいないので、一番も二番もない。
「忘れてなんかないわよ、風の子ルック」
「風の子って呼ばないでくれる?って前にも言ったよね?」
真の風の紋章を宿しているから『風の子』なのだが、本人はその呼び方が気にくわないらしい。
「風の子は風の子。どう呼ぼうがあたしの勝手」
ルックがを睨みつけるが、の方は気にも留めていない。しかしふと何かに気づいて、ルックの顔をまじまじと見つめた。
「あんた・・・おめでとう、天間星ね」
「全然おめでたくなんかないよ。こんな面倒なもの背負わされてさ・・・」
大きなため息がもれる。よほど嫌なようだ。
「選ばれたものは仕方ないわ。諦めて自分の使命を全うしなさい」
ぽんとルックの肩をたたくと、再びため息が零れた。
「ところで、しばらくはここにいるのですか?」
「“その時”までいさせてもらおうと思ってるけど・・・何か問題が?」
「いいえ、念のためにきいただけです。貴女が来ることはわかっていたので部屋の用意はしておきました。ルックが」
「・・・」
相変わらず小間使いか、と思ったが、後が怖いので口からは出さないでおく。
「ありがとう、ルック」
「・・・別に。あんたのためにやったんじゃないからいいよ」
なら誰のためにやったんだといいたいところをおさえ、笑いかけるだけにしておく。
「それで、もう会ったのですか?」
レックナートにきかれ、は真剣な眼差しで頷いた。
「ごく普通の・・・いや、クセはあるけど、それでもどこにでもいそうな少年、だった。これから辛い運命を背負うことになると思うと、やるせないわね。これだけは、慣れないな。慣れたくもないけど」
「そうですか・・・」
レックナートの表情が再び曇る。は慌てて付け足した。
「いや、あの、あたしは大丈夫なのよ?ただ、
宿星の宿命を背負う彼らのことを思うとって事で・・・」
「えぇ、わかっていますよ。は変わらず、優しいのですね」
「え、いや、うん・・・ありがとう」
レックナートが笑みを戻し、も照れながら笑った。しばらく雑談すると、三人はそれぞれの部屋へ入って行った。
運命の執行者、運命を見届けし者、星巡りの者の心内を知る者。
彼女の一の弟子、一〇八の一つなり。
ひとつ、またひとつ、星は巡り、巡る。
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