天魁星
古き友
しばしの別れ
―――――しばしの別れ、再会は必然―――――
がマクドール家にやっかいになって数日がたったある日の夕食時。
「あたし、明日ここを発つね」
突然のことに、ほとんどの者が戸惑った。ポロッと、パーンが口に運ぼうとしていたウインナーがフォークから皿に落ちる。
「それはまた、急だね」
「明日って、いきなりすぎるだろ・・・」
クレオ、パーンが言う。パーンはウインナーを再びフォークで刺して口へ入れた。
「ごめんね。でも、テオ様には話してたの」
「父さんにだけ?俺にも言ってほしかったな・・・」
ティルがむすっとした顔で訴えるのに、ごめんと返す。
(本当はテッドにも言ってたけど)
心の中で呟くが、ややこしくなるだけなのであえて口にはしない。テッドは黙って驚いたフリをしている。
「でも大丈夫よ。ティルとはまた絶対会えるから」
「・・・根拠は?」
「運命」
場がシンと静まった気がした。とりあえず、水を吹き出しそうになったテッドを睨んでおく。しかしティルは一瞬きょとんとしたものの、逆に表情は晴れた。
「じゃあ、その時を楽しみにしてるよ」
上機嫌で食事を再開するティルを見て、とパーン以外が苦笑する。は寂しがっているだけだと思って微笑み、パーンはティルの機嫌の変化の理由がわからず首を傾げたのだった。
翌朝、グレミオ特製の朝食を綺麗にたいらげ、は荷物を手に外に出た。
「絶対、また会えるんだよね?」
「うん、絶対」
妙に確信のこもった頷きを返すと、ティルは笑った。再会した時もこの笑顔が見られるだろうかと思うと、少し切なくなった。
「生きていればまた会えるよな?」
「そうね」
テッドの問いには苦笑しつつ答える。そして、二人と、見送りに出てくれたマクドール家の面々に笑いかけた。
「じゃあ、またね!」
手を振り、彼らに背を向けては歩き出した。門をくぐり、グレッグミンスターの外へ出る。一度、グレッグミンスターを振り返った。
いずれ、また。
はグレッグミンスターから少し離れた所まで歩くと、転移魔法で姿を消した。
ひとたび天魁星から離れた星巡りの者。
再会は運命、その言葉を残し。
次に向かうは、運命の執行者、宿星の戦いを見守りし者の元。
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