将軍の部下
彼らもまた
宿星なり
されど
将軍は
―――――コンビの星、出逢う―――――
翌日、グレミオ特製の朝食をいただいて、は城下町へ出かけた。ティルとテッドも一緒に行くと言ったが、はそれを断った。昨夜空を見て、マクドール家意外にも何人か
宿星がいる事に気づいた。はそれらを探すために彼らの申し出を断ったのだった。きょろきょろと辺りを見渡しながら、前方から来るものに気が付かず、衝撃が肩を打った。
「いってぇなぁ・・・」
ぶつかってたのは体格のいい、少し人相の悪い男だった。軍服を着ていることから、この国の兵士なのだということがわかる。同じ軍服を着ている者を何人も見たから、一兵卒だろう。彼の手には、歩きながら飲んでいたらしくコップがあって、服に中身が零れていた。
「あ、ごめんなさい」
「ごめんなさいで済むかよ。貴重な一枚を汚してくれちまってよぉ・・・。弁償してくれるんだろうなぁ?」
目つきの悪い目で睨まれれうが、は全く動じない。逆に目を細めて言い放つ。
「ちゃんと前を見ていなかったあたしも悪いけど、歩きながら飲んでたそっちも悪い。双方が悪いのに弁償はどうなの?それならあたしだって肩痛かったから治療費貰いたいわよ」
「んだとてめぇ、ふざけやがって!!」
ぐい、と胸倉を掴まれる。その手を振り払おうとした、その時。
「その手を離してやれ!」
「女の子に乱暴するとは、性根が腐ってるな」
第三、第四者の声が聞こえてきた。声がした方に顔を向ける。そこには、赤い軍服の青年と、緑の軍服の青年が立っていた。はその二人を見て、驚きに目を瞠る。
地猛星
地奇星
男は彼らを目にすると血相を変えてから手を離し、勢いよく頭を下げて走り去って行った。
「大丈夫か?」
しばらくその背を見ていると地猛星・・・赤い軍服の青年に聞かれ、はこくんと頷く。
「話はなんとなく訊かせてもらった。赤月帝国の軍属がみんなあんな風だとは、どうか思わないでくれ」
地奇星・・・緑の軍服の青年が困り顔で苦笑するのに、は笑みを浮かべる。
「大丈夫よ。2人は助けてくれたもの」
「それにしても、あんな啖呵切るとは、肝が据わってるな」
「ありがとう」
がにこりと笑うと、地猛星は一瞬面を食らい、苦笑った。
「それじゃあ、これからは気をつけろよ?」
「ありがとうございました。・・・あ、待って!」
立ち去ろうとする二人のマントの裾を掴む。突然のことに二人は少々つんのめりながら半身を返した。
「名前、教えて?」
「・・・アレンだ」
「俺はグレンシール」
「あたしは。また会うことになるだろうから、その時はよろしくね。アレン、グレンシール」
言って笑うに対し、二人は少々戸惑いながらも笑い返した。そして今度こそ、と去って行った。
後から聞いた話、アレンとグレンシールはテオの部下なのだという。いい将軍にいい部下たちかと納得したが、同時に気になることもあった。アレンとグレンシールは星の下にある。だが、上司であるテオは星の下から外れている。また、ティルは
宿星だが、父であるテオは宿星ではない。マクドール家の居候たち三人も宿星だというのに。嫌な予感が頭をよぎり、の中で渦巻いた。それを頭を振って払いのけ、気持ちを落ち着かせる。宿星でなくとも戦の中、仲間となる者は大勢いるのだ。どうか、悲しみばかりの宿命でないことを。ただただ、願った。
将軍は星の下にあらず。
将軍の部下は星の下にあり。
将軍の息子は星の中心なり。
宿命も、運命も、知るのは星のみ。
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