かの気配
今は如何に
彼 笑顔の元は
新たな赤き星
天魁星也
―――――赤き星、天魁星ここに在り―――――
今日はもいることだし、とテッドもマクドール家に泊まることにした。現在一度自宅に帰り、再びマクドール家に向かっている最中である。ふと空を見上げたテッドは、その夜空の星々の中に見覚えのあるモノを見つけ、目を見開いた。
「なんで・・・」
テッドは走り出した。マクドール家に。の元に。
「おかえりなさい、テッドくん」
「ただいまっ」
出迎えてくれたグレミオに騒々しく返し、テッドはにあてがわれた部屋に向かった。ドアの前で深呼吸して息を整え、ノックする。
「どうぞ」
返事を聞いてドアを開ける。は窓を開け、窓枠に背を預けて空を見上げていた。
「、空に・・・!!」
「・・・見たのね」
何を、をきく前にはテッドの意図を読んだ。
「場所変えよっか。星も見えやすいし」
は言うと軽い身のこなしで窓から外に出て屋根に上った。テッドも、落ちないように気を付けながら後に続いた。
屋根の安定したところに腰を下ろす。二人は自然に空を見上げた。
「・・・もう、会ったのか?」
切り出したのはテッドだった。真剣な眼差しがに向けられる。
「会ったよ。燃えるような赤い星。まぎれもなく、天魁星だった」
「お前がこの街に来て一日もたってない。会ったやつは限られる」
「・・・・・」
「おまえが“使命期間”外で初めて会ったやつの申し出を受けるなんて、無いに近いよな」
「・・・・・」
テッドの言いたい事は当たっている。それでもはあえて自分からは答えを言わず、テッドの口から発せられるのを待った。無言を肯定ととったテッドは、大きく息を吐いて空を見上げ、苦笑した。上空で、赤い星が瞬いている。
「あいつもやっかいなモンを背負っちまったなぁ・・・」
答えは“正解”だった。
「
宿星に、それも天魁星に選ばれたからには、数々の宿命が降りかかるでしょうね」
「あぁ。でもまぁ、ティルなら大丈夫だろ」
テッドは笑って言った。根拠は?ときくと、ティルだから、と返ってくる。答えになっていないと呆れるが、テッドがティルを信頼している事は感じ取れた。
「そうだ、俺は?」
「あんたは今回は外れてるわ」
「そっか・・・。あいつが宿星なのに俺は違うってのはなんか複雑だけど、戦いが始まっても、前よりはゆっくりできるってことだよな」
テッドの在り方を言っているようでは思わず顔をしかめたが、それはすぐに微笑みに変わった。
「テッドはティルが大好きなのね」
「そっ・・・う、だな。ティルといるとすごく楽しいし、安心できるからな。ティルに出会えて、本当に良かった。テオ様にはすごく感謝してる。テオ様に拾ってもらわなかったら、ティルと出会うなんてできなかっただろうからな」
「ティルがテッドを変えてくれたのね」
「あぁ。だから俺は、ティルが天魁星でもやり抜けると思うんだ。(黒いけど)真面目な奴だし、(黒いけど)いいやつだし。人を惹き付けて、人を動かして、人を変える力を持ってるよ、あいつは。こいつも・・・ティルを喰らおうとはしてないしな」
テッドは右手を押さえた。その手袋の下には、忌々しい、だが捨てられぬモノが宿っている。
「制御、もう大丈夫みたいね」
「なんとかな」
テッドは肩をすくめてみせた。は安堵して微笑み、空を見上げた。赤き星が、幾個かの星と共に輝いている。
巡りに巡る宿星の運命。
戦いは未だ始まってはいない。
紋章の加護の元、彼らに降り注ぐ運命は如何に動くのか。
星のみぞ知る。
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