懐かしい気配 懐かしい顔
喜び溢れ 笑みこぼれる
運命は
如何に動くのか
――――懐かしき友、新たな友―――――
星は確かにあった。しかし、まだ時≠ナはないようだ。時≠ナなければはまだ星巡りの者ではない。星巡りの者の宿命を果たす必要はない。だがせっかく見つけた赤き星とすぐ離れるのも惜しいと思ったは、ティルの待ち人を一緒に待つことにした。
「ティルの親友ってどんな子?」
待っている間、少し気になってはティルにきいてみた。
「一言で言うと調子のいいやつ=v
「一言以上では?」
「そうだな・・・」
ティルは親友の顔を頭の中で描き、整理した。
「普段はお調子者で、一緒にいると楽しいんだけど、時々年相応じゃないというか、
年寄りくさい。あと、何か暗いものを抱えてるけど隠してる・・・って感じかな」
「・・・へぇ・・・ッ!?」
若干酷い言葉もあったような気がするがスルーしつつ、はその少年を思い浮かべようとしていた。そんな時右手が何か≠ノ反応し、は表情を変えた。
「?」
「なんでもないよ」
ティルが心配そうに覗き込んでくるのに対し笑って返す。の内でひとつの可能性が渦巻いていた。
(この気配は、まさか・・・でも・・・)
「あ」
ティルが声をあげたのにつられるようにも顔を向ける。ティルの視線の先を見つめると、自然に表情がほころんだ。そして、やっぱり、と軽く目を伏せた。あの気配は彼の“ソレ”だったから。だが、ティルが語った人物との知る“彼”とはかけ離れている。お調子者では、決してなかった。
「テッド!」
他人と関わることを、彼は拒み、恐れていた。
「待たせたな、ティル」
だが今の彼は、昔のように他人を拒む様子も、恐れている様子もない。ティルに向ける表情も、今までに無かったとすら思う様な。
「・・・あれ?」
テッドがティル以外の存在に気づいて顔を向け、驚き目を見開いた。
「!?」
「久しぶり、テッド」
テッドはが今まで数えるほどしか見ていない様な満面の笑みで、二人に駆け寄った。
「テッドとって、知り合いなんだ?」
とテッドが再会を喜び合っている横で、ティルが口を開いた。
「昔馴染みってやつだよな。にはホント、沢山助けられたんだ。がいなかったら俺、今頃生きてなかったかもしれないくらいだ」
大げさだな、とは苦笑した。自分がいなくても、生きていくことくらいは出来ただろうに。
「生きていなかったかもしれないくらいって・・・二人とも同じくらいの年に見えるけど・・・?」
なかなか鋭い。ティルの発言にテッドは慌てた。
「そ、それくらい世話になったって事だよ!同じくらいの年でも助けられたり世話になったりってあるだろ!?お前と俺みたいにさ!大体、こんな格好いいじいさんいるか!?」
話がずれている。むしろ墓穴を掘っている。この場合年寄り扱いされるであろうは、助けた側のだ。そもそも“年寄りなのでは”なんてことは誰も一言も言っていない。
「自分で格好いいって、
自意識過剰?訴えの意味がよくわからないけど・・・まぁ、そういうことにしておいてあげるよ」
酷い言われ様には気づいていないのか、テッドが安堵の息を漏らす。
「テッド、あんた変わったわね」
「良いことだろ?」
にかっと笑うテッドには苦笑で肯定した。
「そういえば、宿はもう決めた?」
唐突に、ティルがにきいた。
「まだだけど」
「じゃあウチに来なよ。宿代浮くし、ともっと話してみたいし」
「え」
「そりゃあいいや。そうしろよ、」
テッドにも言われ、は考えた。願ってもないことだ。宿代が浮くのは嬉しいし、新たな星のことをもっと知りたい。
「ならそうさせてもらおうかな。でもいいの?家の人とか」
「友達連れて来て嫌がる人は、ウチにはいないよ」
友達、という言葉に地味にじんとくる。テッドはティルに変えてもらったんだ。そのティルも、あたたかな家族の中にいるようだ。あとから聞いた話、血の繋がりのあるのは父親だけらしいが。
「そう、良かった」
赤き星を見つけ、懐かしい友と再会し、この度の宿泊先を簡単に見つけることができた。一石二鳥ならぬ一石三鳥で、はなんだか得した気分だった。
赤き星と懐かしい友。
二人の間で運命は如何に動くのだろうか。
誰にも、星巡りの者にさえ、知るよしもない。
Created by DreamEditor