神より与えられし翼




















食堂は今日も賑わっている。アレンとは寄生型お約束の大量の食事を前にして、周りにいる人たちの口元をひきつらせていた。

「そういえば、のイノセンスってどんなものなんですか?」

「ん?」

食べながらアレンがきく。あれ?と首を傾げるが、あぁそうかとすぐに把握する。

「私がイノセンス発動させたの、アレン見てないんだっけ」

「タイミング悪く瓦礫に埋もれてて・・・」

アレンがぽりぽりと頬をかく。は小さく笑って説明した。

「私もアレンと同じ寄生型のエクソシストっていうのは言ったし、ご覧の通りだね」

目の前の食事を示しながら苦笑する。いくら大食らいでも、寄生型以外がこの量は無理がある。

「イノセンスがあるのは背中の、肩胛骨の間。発動させると、肩胛骨が羽根に変化するの」

「羽根?」

いまいちピンときていないらしく、アレンは首を傾げる。

「あとで修練場に行こう。鍛錬がてら見せるよ」

「はい」

二人は大量の食事を全て腹に詰め込み、修練場に向かった。



















他の人を巻き込まないように密室の、空いている修練場に入る。

「この部屋ってぶっ放しても大丈夫なんですか?」

つい先日コムリンが城内を破壊して回ったことを思い出してアレンが言う。あの事件でアレンの部屋も潰れてしまっていたのだ。

「ここはホントにエクソシストの修練場だから大丈夫。とりあえず、今のところ、壊したことはない」

「・・・大丈夫かなぁ」

いまいち説得力に欠けるの言い方にアレンは少々不安になる。

「大丈夫!壊したら直せばいいんだよ!」

「そ、そうですね」

「よし、始めようか」

の一言で二人は距離をとって向かい合う。

―――イノセンス発動―――

アレンの左腕が武器の型となる。痛い思いをしてコムイに直してもらった腕は好調そうだ。そしての背には、白い翼。

「これが、のイノセンス・・・」

「“翔華”っていうの」

がバサッと羽根を羽ばたかせる。ふわっとの身体が宙に浮き、アレンは、はははと乾いた笑いをもらした。

「飛べちゃったりも・・・するんですね・・・」

「飛べちゃったりもするよ」

心なしか冷や汗が垂れているような気もするアレンには笑いかける。ばさりと翼が羽ばたき、アレンは身構えた。

「第一翔・羽雨天降」

「!?」

が右手を降り上げると、無数の羽根が天井近くまで昇る。そして振り下ろすと、アレンに無数の羽根が降り注いだ。

「うえっ!!?」

アレンは必死に避けたり左腕で防いだりしたが、数が多すぎて全ての羽根をやり過ごすことはできず。羽根が落ちきった頃には頭や肩に2、3本刺さってしまっていた。ティムキャンピーの頭の上にも1本突き刺さっている。

「なんかズルいなぁ・・・」

「接近戦にする?」

羽根を引っこ抜きながらアレンがこぼすとが降下してきた。頷きはしなかったものの表情は正直で、アレンの顔はYESと言っている。

「第二翔・翼刀」

サエが、背に下げた刀を抜くように手をかける。羽根が集まり凝縮して、が抜いていく内に刀の型となっていた。

「はい準備完了。行くよ!」

「はい!」

二人が同時に踏み出す。の翼刀とアレンの左腕が何度も打ち合わされる。

「・・・ッやりますね、

「アレンも、ね!」

ガキィッと大きな音がして弾かれ、二人の間合いがあく。アレンはそのまままたつっこみ、は下段に構えた。

「・・・翔蓮華!」

「!」

下段からの振り上げ。どこから吹いてきたのか、上昇気流と舞う羽根にアレンが吹っ飛ばされる。アレンは空中でなんとか体制を整え、左腕を銃へと変型させた。

「ッはぁっ!」

レーザーが放たれ、真っ直ぐに向かっていく。は避ける気配もなくそこにいた。ザァッと翼が揺れる。

「護翔・空の護り手」

背にある翼がバサッと広がり、を覆い込んだ。レーザーと翼がぶつかり合い、やがてレーザーが消え入る。アレンは乾いた笑いを漏らした。

「あはははは・・・敵無しですね・・・」

「そんなことないよー?あ、少し焦げちゃった」

パッと見汚れかと思う黒いモノは焦げだった。あのレーザーを受けて少し焦げる程度で済むのだから、かなり固い護りである。

「んー・・・これくらいにしとこうか」

不意にが言い、イノセンスの発動を解除した。刀と背の羽根がザァッと散っていく。

「僕はまだいけますよ?」

「これから科学班手伝う約束してんの」

「・・・大変ですねぇ」

納得したアレンもイノセンスの発動を解いた。

教団ここにいる時くらいはね。自分のことをしっかりしろとかしっかり休めとか言われるけど、科学班のみんなこそ休めって言いたくなるし」

「確かに・・・」

科学班はほぼ徹夜が絶えない。交代で仮眠をとってはいるが、仮眠はあくまで仮眠だ。少しでも熟睡してもらえるなら喜んで手伝う。

「それじゃあアレン、お疲れ様」

「お疲れ様」

は軽く手を振って修練場をあとにした。






「翼が生えるイノセンスか・・・なんだか、天使みたいだったな・・・」

アレンのつぶやきをきいたのは、ティムキャンピーだけだった。



















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