殺戮音の響く街



















汽車の中で腹ごしらえをすると、アレンとの食事量を見て神田が「化け物か・・・」とうんざりした顔で呟いた。ここでアレンと、お互いが寄生型のエクソシストだと把握する。そして化け物胃袋の持ち主達は、「寄生型だから仕方がない」と口をそろえたのだった。
やがて汽車が目的地であるマテールの最寄駅に到着し、彼らは汽車を降りた。現状を把握しようとトマがマテールにいる探索部隊に連絡を入れるが、応答がない。これはまずい、と四人は走り出した。


「探索部隊達は殺されてる可能性大、か・・・」

「保護対象であるマテールの人形のイノセンスが無事なら問題ない。それがあいつらの仕事だ」

「・・・ったくあんたね」


弔いの言葉のひとつも出てこないのか。がため息を一つこぼす。少しすると、マテールを見渡せる崖の端に到着した。冷たい空気が肌に触れて、町の状況を物語っている様である。


「ありがとう、お疲れ様。ゆっくり休んで」


は両手を合わせて目を閉じた。死んでいった探索部隊なかま達への追悼と、彼らの死を無駄にしないよう任務を成功させるという誓いを込めて。


「・・・おいお前」


神田がマテールから目を離さずに口を開く。自分だろうと判断したアレンが神田に目を向けた。


「始まる前に言っとく。お前が敵に殺されそうになっても、任務の邪魔だと判断したら、俺はお前を見殺しにするぜ!戦争に犠牲は当然だからな。変な仲間意識はもつなよ」

「嫌な言い方」


ふい、とアレンが町に目を戻した時、いくつものガトリング音が響いた。それだけで、何が起きたのかを瞬時に把握する。


「アクマだ!」

「アレン!」


おそらくマテールの亡霊と探索部隊、そしてアクマがいるであろう場所に、アレンは単独で突っ込んで行った。



















ただガトリングを撃ちまくるだけの通常のアクマとは違う、レベル2に進化したアクマにアレンが吹っ飛ばされる。それを視界の端に入れながら状況整理をする。結界は四つ。その中心で人形は守られているが、そう長くはもたないだろう。そしてその周りには、レベル1のアクマが2体。


「あの馬鹿が・・・」

「どうする?」

「俺が行く。お前は人形を回収してくれ」

「了解」


神田が背に携えた刀を抜いた。彼の装備型のイノセンス・六幻だ。はいつでも人形の所へ行けるように身構えた。


「いくぞ、六幻」


神田が六幻の刃に左指を二本添え、スッと刃先へ流していく。これで六幻“イノセンス発動抜刀”完了だ。神田が、レベル1達の方へと跳んだ。


「六幻、災厄招来!界蟲“一幻”!!」


六幻の“一”の型が放たれると同時にも跳び、探索部隊の元へ駆けた。息絶えそうな探索部隊に結界装置タリズマンの解除コードをきき出す。“Have a hope”希望を持て、という意味のコードを入力して結界を解いた時、アクマを破壊した神田が駆けつけた。守られていた人影がふたつあることに疑問を感じながら、神田が老爺の方を、が少女の方を抱えて建物の上に跳び上がる。アレンは未だレベル2と対峙していた。


「助けないぜ。感情で動いたお前が悪いんだからな。ひとりで何とかしな」

「いいよ、置いてって、イノセンスがキミたちの元にあるなら安心です。僕はこのアクマを破壊してから行きます」

「気を付けてね、アレン」

「はい」


らはレベル2のアクマをアレンに任せ、人形たちを抱えて移動した。





















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