決着、そして新たな動きのもとへ





















は右手を、背から刀を抜く様に構えた。

「第二翔・翼刀」

翼から刀を形成し、アクマに向かって構える。この狭い空間では大きな翼は邪魔なため、最小限の大きさに抑えた。

「エクソシストめ・・・!」

アクマがガトリングを放つが、神田もも易々と避けていく。はトーマが射程範囲にいることに気づき、彼を抱え込んだ。

「姉ちゃん・・・!」

「頭引っ込めてて」

自分は当たっても少々は平気だが、トーマはそうはいかない。ゼムが守った命、彼の死を無駄にしないためにも守り抜かなくては。どこか安全な場所へ、と巡らせた時、左足に違和感が侵入した。

「な、に・・・!?」

ただのアクマの弾丸ではない。だが何か異物を感じる。

「それはワタシの術と同じ効果のあるものだ。物理的に身体へ侵入し、次第にお前の身体中に根を張ってワタシの意のままとなるのだ!!」

「・・・なるほど」

の口元がへの字に曲げられる、が、それはすぐに笑みに変わった。

「あんたバカだね。私が寄生型なの忘れてるでしょ」

「何・・・!?」

「異物が入り込んで気持ち悪いけど、効果は無いよ。イノセンスが浄化してくれるからね!」

言ってトーマを部屋の隅へおろす。左足は痛むが、なんてことはない。小さくしている翼を羽ばたかせ、一気にアクマに向かって滑空した。同時に神田が、アクマの背後へとまわる。

「六幻、災厄招来」

「翔華」

神田が六幻を引き構え、が翼刀を下段に構える。

「界蟲一幻!!」

「翔蓮華!!」

六幻と翔華の技を同時に受け、アクマはイノセンスに浄化され消え去った。

「・・・バイバイ・・・父さん・・・」

その様を見つめていた少年の目からは、一筋の涙が伝っていた。



















洋館内に他に異常がないか軽く見廻り、3人は町へと戻った。すっかり夜は更けていたが、傷だらけの3人の姿を見て宿屋の主は快く入れてくれた。傷の手当てをして朝まで休息をとる。なんだか騒がしくて目を覚ますと、洋館の事をききつけたらしい町民たちが、宿のまわりに集まっていた。簡単に説明をするが、やはりアクマのことを信じる者はほとんどいなかった。そんな中、町の孤児院がトーマを引き取る事が決定した。この孤児院にはアクマに親を殺された子どももおり、院長はアクマを信じているのだという。

「兄ちゃん、姉ちゃん、ありがとう。おれ、父さんみたいな人がもう出ないようにみんなを守るよ」

「うん」

トーマは大丈夫そうだった。元々芯のしっかりした子だ。きっとすぐに孤児院の中でもいい兄貴分になるだろう。トーマは2人と別れるまでゼムの事は口にしなかった。心の中でいろいろ巡らせているのだろうから、もあえて何も言わなかった。 宿屋で電話機を借り、本部へ連絡を入れる。本来一般の電話機を使うのはあまりよくないのだが、機材はゼムが背負っており、ゼムがアクマの毒にやられたときに一緒に壊れてしまったから、致し方がない。ゴーレムでは本部までは電波が届かないのだ。

『・・・そっか、うん、2人共、お疲れ様』

経緯と結果、ゼムのことをコムイに報告する。少し間があったから、心の中でゼムに追悼をおくったのだろう。

『それじゃ1度本部に戻って・・・と言いたいところなんだけど、君たちにはこのまますぐに次の任務へ行ってもらわなくちゃいけないんだ』

「・・・何かあったの?」

緊張感が含まれるコムイの声に、も気を引き締める。

『先日、元帥のひとりが殺されました』

「!?」

「なっ・・・誰が!?」

自分達の師も元帥であるためか、が大声で食いつく。

『イエーガー元帥だよ』

「・・・イエーガー元帥が」

自分達の師、ティエドールではなかったことへの安心感と、イエーガーが殺されたという事実への驚愕が一気にくる。元帥が殺されたなど、信じ難きことだ。ベルギーで発見されたイエーガーは教会への十字架にうつ伏せに吊るされ、背中には“神狩り”と彫られていたという。神・・・イノセンス狩り。イエーガーが所持していたイノセンスは全部で9つ。奪われた、もしくは破壊されたイノセンスが9つとなると、大きな痛手てある。さらに、発見した時にはかろうじて生きていたイエーガーは、息を引き取るまでずっと歌っていたらしい。“千年公はハートを探してる”と。

「千年公は千年伯爵の愛称だとして・・・ハートっていうのは・・・?」

『109個のイノセンスの中にある“心臓”とも呼ぶべき核のイノセンス。イノセンス全ての根源であり、全てのイノセンスを無に帰す存在』

「ヤツらがそれを狙ってんのか」

今まで黙ってきいていた神田が口を開くと、コムイが『うん』と返す。

「手がかりはあるの?ハートの」

『無い』

「「・・・・・・」」

きっぱりと言うコムイになんとも言えぬ沈黙が流れる。

『石箱(キューブ)には何も示されてないからわかんなくてねー。ただ、最初の犠牲者になったのは元帥だった。もしかしたら特に力の在る者に“ハート”の可能性を見たのかもしれない』

「つまり、狙われる可能性が高い元帥の護衛が次の任務ってこと?」

『理解がはやくて助かるよ。神田くんはティエドール元帥の元へ。ちゃんはクロス元帥の捜索隊の方へ行ってほしい』

「は・・・え?」

返事をしかけてふと首を傾げる。

「なんでユウは師匠で私はクロス元帥?しかも捜索隊って・・・」

『大体は弟子がつくんだけど、クロス元帥は4年も音信不通でどこにいるかわかったもんじゃないからねー。弟子であるアレンくんと、リナリー、それからラビとブックマンにも行ってもらってるけど、加えてちゃんにも合流してほしいんだ』

なんせ相手はクロス元帥だし、と言われると、了解と答えるしかない。よし、と気を引き締めた時、神田が不意にコムイへとこぼした。

「おいコムイ、こいつ脚になんか変なモン入ったらしいんだが」

「ちょ、ユウ」

突然話を出されてが慌てる。コムイも『変なモン?』と首を傾げつつ、うーんと唸った。

『ブックマンにちゃんと診てもらってね、サエちゃん』

「・・・はい」

『それじゃ、グッドラック』

コムイとの通話が切れて、大丈夫なのに、と呟くと、引き摺ってんだろうがと返される。気付かれないようにしていたのに見抜かれてしまうとは、さすがとしか言いようがない。

「じゃあユウとはしばらくお別れだね。師匠には元気ですって伝えておいて」

「知るか」

「ひどー」

ぶーと頬を膨らませるが、神田はただそっぽを向いて歩き出した。

「あっ、ユウ!無茶しない様にね!」

が言うと彼はぴたりと足を止め顔だけ振り返り、「お前がな」と目で言って去って行った。

「・・・ホントに無茶しないでよ?」

はひとつため息をつくとすぐに切りかえ、アレン達と合流するために足を進めた。





















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