ヒカリ






















その兄妹は、中国で生まれた。
兄妹の父は黒の教団の探索部隊ファインダーの一人だったが、兄妹が生まれた後、兄妹を見る事なく遠い地で亡くなったという。母は黒の教団の協力者サポーターで、兄妹も黒の教団に携わる事は必然だった。また妹は、イノセンスをその背に宿して生まれ落ちていた。生まれながらに、神の使徒エクソシストだった。兄も、探索部隊か協力者になるようにと、母は二人を育てた。



















兄妹が7歳の時、母が突如病にかかり、亡くなった。兄妹は母の遺言、「黒の教団へ」の言葉を守るため、黒の教団アジア支部を目指した。
しかし、悲劇は起きてしまった。
いつもと変わらぬ朝、と思っていた。なんとなく渦巻く胸騒ぎ以外は。妹は先に起きていた兄を見つけて、愕然とした。兄は、魔の誘惑に負けてしまっていた。兄だったはずの、母だったはずのソレを見て、妹は涙した。「なぜ」と問うても答えてくれる者はもういない。ソレはもう兄ではなかった。妹の叫び声と共に背から広がる白き輝きが、ソレを貫いた。光が消えた後そこにたたずむのは、妹ただ一人だった。





















何か異変を感じ、彼女は外へ出た。そこで見つけたのは、一部荒れた地でうずくまる一人の少女だった。彼女は少女のそばにしゃがみ込み、何があったと問うた。少女は虚ろな目のまま、ぽつり、ぽつりと呟いた。少女に、手が差し伸べられた。黒の教団へ。彼女の言葉に引き上げられ、少女は再び立ち上がったが、心の傷は未だ癒えぬままであった。
守護神である彼女に連れられ、少女は黒の教団アジア支部へ到着した。母に言われて目指した場所。本来は兄と二人で来る筈だった場所。少女の気は再び沈む。
少女が其処で最初に出会ったのは、支部長補佐だった。彼は少女の事情をきくと、言った。「今日からここが君の“家”で、私たちが君の“家族”だよ。私が今日から、君の“お父さん”になるよ。」少女の目が、ゆっくり見開かれた。次に、事を聞きつけてやって来た支部長を、彼は“母”だと言った。少女の中で、何かが小さく光った。さらに彼は自分の息子も呼んで来て、“兄”だと言った。「みんなが、君の“家族”だよ。」少女の中で何かが輝き、弾けた。少女の瞳が滲み、大粒の雫が零れ始めた。大きな声が、響いた。それは母に対する申訳無さか、兄に対する悲しみと悔しさか、新しい家族に対する戸惑いと喜びか。ただただ大きな泣き声が、涙が、少女の心の傷を洗い流すように溢れ出していた。



















――――
すべての始まりをざっくりと。

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