花冠
京の北、鞍馬の山。ここに、一人の鬼が住んでいた。鬼は剣技に長けており、男子と女子が1人ずつ、弟子としていた。名を、牛若丸と、といった。ふたりは師匠であるリズヴァーンの教えをきき、修行に励んでいた。そんなある日のこと。
「・・・・・」
山の中での修行の帰り道、不意にが立ち止まった。じっとどこか一点を見つめている。
「?」
兄弟子である牛若丸が、何事かと声を掛ける。リズヴァーンはの視線の先を見て、「あぁ」と納得した。
「今年も無事に咲いたのだな」
「咲いた・・・?・・・あ、花、ですか」
リズヴァーンの言葉を聞いて、ようやく牛若丸も納得する。そこには野々花が小さな花畑を作っていた。どうやらここには毎年小さな花畑が出来るらしい。
「・・・・・」
2人の声がまるで聞こえないかのように、の視線はそこから外れない。
「・・・少し寄って行くか?」
「!いいでのすか!?」
ぱぁっとの表情が明るくなり、花畑へと駆けて行く。花畑の中にしゃがみ込むと、はせっせと何かを作り始めた。
「?」
「牛若丸、私達はもう少し打ち合う事にしよう」
「!はいっ!」
何をし出したのかと牛若丸は首を傾げたが、リズヴァーンの誘いに嬉しそうに頷いて、彼の後に駆けて行った。
「できた!!」
どのくらいの時間がたったのだろうか。が高らかにそれを掲げる。
「終わったのか?」
そこへ、見計らったかのように、リズヴァーンが歩み寄って来た。その後ろには、疲れた様子の牛若丸。さすがにいつもの修行以上に鍛錬したのは堪えたらしい。
「先生!牛若!しゃがんでください!」
「・・・こうか?」
に嬉々とした様子で言われ、男二人は素直にしゃがむ。そして、ぱさりと頭に何かを乗せられた。
「・・・?」
「・・・あぁ、花冠か・・・」
さすがに自分の頭の上までは見えず、リズヴァーンは牛若丸の頭上を見て言った。がえへへと少し恥ずかしそうに笑った。
「いつもお世話になってる、大好きな二人へのおくりものです!」
「・・・っ」
花の様な笑顔で言われ、牛若丸の頬が朱に染まる。
「そうか・・・ありがとう、」
「はいっ」
頭を撫でられ、は嬉しそうに頷いた。
「・・・っ」
まだ赤いままの顔で、牛若丸がを呼ぶ。
「その・・・あ・・・ありがとう・・・」
照れて視線が下へ下へと行くが、は気にしなかった。とびきりの笑顔で牛若丸にとびつき、また牛若丸の顔を夕陽の様に赤く染めるのであった。
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花冠・・・花びらの集まったもの。
遙かなる時空の中で3
の修業時代。リズ先生の弟子、九郎の妹弟子、望美の姉弟子にあたる。修行してたのは一年間だけど。
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